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大阪大学医学部長選挙で現職・澤教授がまさかの落選

 2016年12月に行われた大阪大学医学部長選挙で、再選を目指した澤芳樹・心臓血管外科教授が、前医学部長の金田安史・遺伝子治療学教授に敗れる波乱があった。日本再生医療学会理事長を務めるなど学内のみならず学外にも顔が広く、阪大の〝顔〟であった澤氏に何が起きたのか。

 澤氏は1980年に阪大医学部を卒業。金田氏とは医学部の同級生だが、年齢は金田氏の方が上だ。卒後、第一外科に入局した澤氏に対し金田氏は大学院に進学。「2人は仲も良く、臨床の澤、基礎の金田としてそれぞれ成果を上げていた」(阪大関係者)。遺伝子治療学分野の教授となった金田氏は遺伝子導入法の開発で実績を積み、心臓血管外科教授となった澤氏は世界初の心筋再生医療製品「ハートシート」の開発で多くの賞を受けた。

 先に医学部長になったのは金田氏で、2013年から医学部長を1期務めた。15年に医学部長に就いた澤氏は再選を狙ったのだが、阻んだのが金田氏だった。「澤氏の周りにはキナ臭い情報が出回った。澤氏が、16年7月の参院選で落選した阪大医学部卒の梅村聡元議員を使って利権確保の動きをしていた、というもの。梅村氏が落選し、事務所スタッフが公選法違反で逮捕されたことで、澤氏は追い込まれた」(同関係者)。国の再生医療安全確保法制定など環境整備が整ったことで、「ハートシート」は世に出た。政治や行政、製薬にも幅広い人脈を持つ澤氏だけに、こうした情報は信憑性を持って受け止められた。

 一方、澤氏に近い同大関係者は「選挙結果はほぼ同数だったが、澤氏が年長の金田氏に譲った」と話し、「臨床の教授が1期であれ医学部長を務めたことがすごい」と評価。いずれにせよ、1期務めると次に意欲が出てしまうのは人間のか。

医療職にも向けられる
労基署の「監視の目」

 新入社員の労災自殺を巡り、厚生労働省は昨年末、労働基準法違反の疑いで電通と同社社員を書類送検した。1月には、やはり過労からうつを発症したとして労災を認定された新入社員に違法な残業をさせたとして三菱電機と同社社員が書類送検された。新入社員は研究職として同社研究所に所属しており、「研究員の違法残業の立件は珍しい」(厚労省)と世間を驚かせた。

 「相次ぐ大手企業の書類送検は、国策捜査と言えるでしょう。働き方改革を進める政府の強い意向を受けていると言わざるを得ないからです」と大手紙記者が解説する。

 労働基準監督署の仕事に変化が出てきたと指摘する声は多い。労働問題に詳しい弁護士によると、労基署がこれまで捜査してきたのは、建設現場や工場などブルーカラーの職場が中心。長時間労働が横行すれば事故につながりかねず、労働者の死亡や怪我などの労働災害に直結するからだ。

 しかし、「最近の労災認定は、長時間労働によるうつ病など、ホワイトカラーの職場で多く起きている」(同弁護士)。建設現場などでの死亡事故は減少傾向で、ホワイトカラーの職場で将来ある若い労働者が長時間労働の犠牲になる例が目立つ。

 さらに、労災認定から立件までの時間が短縮化されているのも特徴だ。「労災認定のため、労基署は勤務時間の書類や関係者の証言など資料を集めている。証拠が集まっているため、早期立件が可能となる」と労働担当記者。これを警戒し、大手企業の間では労災申請に駆け込む社員を妨害する動きが出ているという。

 「労基署の監視の目は医療職など専門職にも向けられている」と厚労省関係者。医療機関は厚生局だけでなく労基署も恐れないといけないようだ。

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