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未来の会

第84回 NSAIDs・ステロイドで腸穿孔

 NSAIDsとステロイド剤は、上部消化管の潰瘍を誘発し、穿孔の原因となり得ることが古くから知られている。下部消化管(小腸、結腸、直腸)の潰瘍や穿孔の原因ともなることは添付文書にも記載されているが、上部消化管への影響に比較して医療関係者の認識が低いようである。特に憩室穿孔に対する薬剤の影響を再点検し、薬のチェックTIP69号(2017年1月1に掲載したので、その要約を報告する。

憩室穿孔とNSAIDs・ステロイド剤
 消化管穿孔とNSAIDsなど薬剤使用と関連があることは、個別の症例報告、症例シリーズの他、1987年以降に実施・報告された多くの症例-対照研究や、2014年に実施されたシステマティックレビューとメタ解析で認められており、医学的に確立しているといえる。NSAIDsの添付文書にも「小腸・大腸の潰瘍、出血性大腸炎」「穿孔を伴う消化管潰瘍」が記載されている。

 システマティックレビューとメタ解析の報告では、NSAIDsに関してメタ解析した8件の報告のうち、2件は極めて異質であったので、再点検したところ、1件はデータ抽出に間違いがあり、1件は調査方法が不適切であった。適切な7件をメタ解析した結果、憩室穿孔に対するNSAIDsの危険度(オッズ比)は5.12 (95%信頼区間:2.72-9.69,p<0.0001)であった。

 また、ステロイド剤については、報告のあった6件のうち不適切な1件を除き、5件のデータをメタ解析した結果、統合オッズ比は10.22(5.66-18.43, p<0.0001)であった。

 NSAIDsとステロイド剤を併用した場合のオッズは、15.42(1.38-∞,p= 0.0225)であった。

 オピオイドのオッズ比は3.54 (2.03-6.16,p<0.0001)であった。

薬理学的に十分説明が可能
 NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用によりプロスタグランジン合成を阻害するため、血管が収縮し、身体の各組織で虚血が生じる。単に虚血になるだけでなく、虚血とその後の再灌流が繰り返されることが組織傷害を生じる原因となっている。

 ステロイド剤も、プロスタグランジンの合成を阻害し、血管収縮作用があり、NSAIDsよりもさらに広範囲に抗炎症作用があり組織修復を阻害するため、NSAIDs以上に腸穿孔の危険度が高い。両者の併用はさらに危険度を増強する。

 オピオイドは、腸の蠕動を抑制し鼓腸・腹圧亢進により穿孔の危険を高める。

抗がん剤による穿孔の害
 抗がん剤についても、大腸や小腸の穿孔を生じ得る。特に、イリノテカンあるいはベバシズマブ(アバスチン)で高頻度である。化学療法で腸粘膜細胞の再生が抑制されるため、穿孔を来しやすい。数%から、最大6%の穿孔が報告されている。ステロイド剤やオピオイド、NSAIDsの併用でさらに頻度は高まる。

実地診療では
 NSAIDs、ステロイド剤、オピオイド(ロペラミドを含む)は、小腸・大腸の虚血性傷害を起こしやすい。致死率も高いので適応を厳密に吟味し、過剰使用・誤用を避け、使用後は監視を厳重にすべきである。EGFR阻害剤やVEGF阻害剤も含め、抗がん剤化学療法も同様である。

参考文献
1) 浜六郎他、薬のチェックTIP.2017:17(1):14-16

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  1. 腸の炎症を抑えるため、管を使ってステロイド液を多量に腹部に直接投入する治療を受けました(都内大学病院)。(2006年09月)その後も、良くならず、大腸を全摘出しました。突発性潰瘍大腸炎として診断を受け、人工肛門になりました。全摘出した大腸は、色が変色し、裂けている様な筋が一直線に入っていたようです。その後も、小腸の穿孔が何回もあり、手術をくりかえしました。5回、開腹手術をしましたが、良くならず、三重大学に転院しました。肛門は弾力性がなくなり、腸液が漏れ、毎晩1、2時間毎にトイレに行っています。

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