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北朝鮮の拉致問題に対しては 核・ミサイルとの一体解決を目指せ

北朝鮮の拉致問題に対しては 核・ミサイルとの一体解決を目指せ
伊豆見 元(いずみ・はじめ) 東京国際大学国際戦略研究所教授

1950年東京都生まれ。中央大学法学部卒業。上智大学大学院外国語学研究科博士課程前期修了。財団法人平和・安全保障研究所主任研究員、静岡県立大学国際関係学部助教授、ハーバード大学高等研究員などを経て、95年静岡県立大学国際関係学部教授。2003年同大附属現代韓国朝鮮研究センター所長も兼任。2016年から東京国際大学国際戦略研究所教授。単著に『北朝鮮で何が起きているのか』、共著に『北朝鮮・その実像と軌跡』など。


——北朝鮮は9月に今年2度目の核実験を行ったり、戦闘機による派手な航空ショーを催したりと軍事的な行動が目立ちますが、意図は何でしょうか。

伊豆見 航空ショーは意外でした。国内向けの権威付けだったのでしょう。国際的には、北朝鮮の通常兵器は古過ぎるので、見せても意味がありません。国内に向け、核ミサイルで米国本土を直撃できると同時に、戦闘機など通常兵器も充実していると示すことが目的だったと思います。核実験は、1月に次いで今年2回目ですね。北朝鮮の核実験は2006年に初めて行われて今回で5回目。通常なら2〜3年おきにデータの分析を行いながら実験するのが常識ですが、1年に2回というのは多いですね。技術的というよりも政治的な狙いがあるのでしょう。「米国本土を攻撃できる核ミサイルの保有」という話が完結したことを宣伝するために、やれることを全部したということだと思います。

——北朝鮮は「核」にこだわりますね。

伊豆見 1月の実験のときは水爆実験に成功したと主張しました。9月は核弾頭の爆破実験としています。北朝鮮にとって何が重要かというと、まず水爆は国連安全保障理事会の5カ国しか保持していない兵器なので、その“クラブ”に入ったということです。つまり、列強の中に入った、米国とも肩を並べたという論理展開です。そして、小型化した核弾頭を造れるならば、それを標準化することで、さまざまな形のミサイルに装着できるようになります。核ミサイルの量産化にも結び付きます。9月の地下実験は過去最大規模でしたが、衛星で上から見ても核弾頭の爆発実験だったかどうかは分かりません。ただ、北朝鮮が描く「米国本土も攻撃できる核ミサイルを持った」という神話は完結したので、将来的には核実験はしないと思います。核実験とミサイル発射のモラトリアム(猶予期間)は外交のカードになります。

「米国の脅威」を跳ねのけることで権威付け

——北朝鮮の内政の現状は?

伊豆見 金正恩がトップとなってから、本人が若くて経験が乏しく権威もないために、彼の偉大さを手を変え品を変え国民に植え付けようとしています。5月に朝鮮労働党大会を36年ぶりに開催して統治体制を再構築したのもその一つです。国民にはニュースや記録映画で教化を図ります。そして、幼稚園に通う年齢から王朝の神話を叩き込みます。北朝鮮は1995年と96年、自然災害による食糧危機に襲われ、かなりの人々が死亡しました。そうした人々の大半は、“お上”が配給で面倒を見てくれると思っていた人々だと考えられます。生き残った人々は、いわば冷めた人々で、お上が頼りにならないなら自分の力で何とかすると思っていた人々です。そうした人々に対して金正恩の権威を認めさせることは簡単ではないでしょう。彼がトップになってからの5年間は、促成で権威を身に付けることに腐心してきた期間でしたが、特に「アメリカの脅威を跳ねのける」というストーリーを描き、核を主役にそれを進めてきました。金正恩本人というよりは側近が仕切っているのでしょう。

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