日医が外された
「医師の未来決める検討会」
「メンバーに現場の医師がいない。どんな根拠でこの構成員を選んだのか」
厚生労働省で10月6日に開かれた「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会で、そう声を荒らげたのは日本医師会の役員だ。分科会は医師の将来的な需給や地域偏在の解消に向けた対策を話し合うために昨年12月に設置され、今年6月に医学部定員は現状のままとする中間取りまとめを公表している。
分科会では今後の医師必要数を検討するため推計が出されたが、問題となったのが子育てなどで現場を離れることもある女性医師や高齢医師をどう組み込むかだ。推計では0・8を掛けて仕事量が計算されたが、より詳しい調査が必要とされた。
日医がかみついたのは、この調査を行う目的で設置された「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」だ。メンバーは東大の渋谷健司教授や東大医科研の井元清哉教授など厚労省医政局が開いてきた従来の検討会では見ない顔が多く、塩崎恭久厚労相の関与が指摘されている。井元教授の下に研究班が設置され、「調査票を配って医師の意向を詳細に調査することになる」(同省関係者)というが、問題なのは検討会が非公開なことだ。
医師需給分科会では、塩崎大臣が分科会の需給推計を「無意味な数字」と発言し、日医の今村聡副会長が抗議。羽鳥裕常任理事も冒頭の通り人選に疑問を呈した。担当記者は「医師数や働き方など医師の人生にそのまま関わってくる問題に絡めないというのは日医には屈辱だろう」と推察。一方で、「大事な問題だけに非公開での議論は変な憶測を呼ぶ」と同情も。調査結果の信頼性を担保するためには、公開の場での議論が必須だろう。
化血研VS塩崎大臣
バトル激化で第二章
承認書と異なる方法で血液製剤を製造していたことを長年していたとして、厚労省から業務停止命令を受けた化学及血清療法研究所(化血研)が10月4日、再び厚労省から行政処分を受けた。今度は全国的に品薄となっている日本脳炎ワクチンが原因。「ワクチンの原材料を製造する工程で、承認書にある不活化処理を行っていなかった。その後の行程で不活化しているので品質には問題ありませんが……」と担当記者はため息をつく。
化血研といえば、長年の不正に対する処分が5月に終了したものの、その間に起きた熊本地震により生産ラインが被災するなど踏んだり蹴ったり。処分期間が終了するまでに事業譲渡も含めた組織見直しを厚労省から求められていたが、アステラスとの事業譲渡の交渉は難航し、役員を入れ替え、自力での事業継続を目指している。
この事業継続方針にかみついたのが塩崎厚労相だ。「何をされて、このような事態になっているか。胸に手を当てて、考えていただいた方がいい」。9月6日の会見で怒りをあらわにすると、同日、化血研に抜き打ちの立ち入り検査を行った。
「ガバナンス重視の塩崎氏は化血研の長年の不正を見過ごせない。一方の化血研は、多くの〝不正〟は技術改良の結果で、品質に問題はないと強弁。悪いことをしたという意識が希薄だ」と担当記者。厚労省から再度の処分を受けても、「問題とされた製造方法は厚労省の立ち入り前に自ら報告していた。一部に事実誤認がある」とホームページ上で反論し、「厚労省が誤っているかの如き印象を与える表現があるが、厚労省の認識と大きく異なる」と再び厚労省から怒られる始末だ。熊本は「肥後もっこす」で知られる日本三大頑固の地。この戦い、先に白旗を上げるのはどちらか。
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