新薬の薬価算定プロセスは「ブラックボックス」
「超高額」と批判され、高額薬剤問題の象徴と目されている小野薬品工業の抗がん剤「オプジーボ」。中央社会保険医療協議会(中医協)の薬価専門部会では、オプジーボの薬価について、来年度に最大25%引き下げる案が示され、具体的な下げ幅の検討に入った。薬価は原則2年に1回改定され、次回は2018年度に実施される予定だが、通常改定を待たず、緊急的に期中改定される事態となったわけだ。
オプジーボは悪性黒色腫の治療薬として14年9月に薬価収載された。対象患者は年約470人と少なく、小野薬品はピーク時売り上げを31億円と見込み、それらを根拠に薬価が算定された。患者が少なくても開発費が回収できるように高い薬価が付く計算法が適用された。その結果、薬価は1瓶100㍉㍑約73万円、患者1人当たり年間約3500万円という高額になった。
15年12月には、非小細胞肺がんへの効能追加で、対象者は一挙に32倍の年約1万5000人に増加。同社は16年度のオプジーボの売り上げを1260億円と見込んでいる。
9月には腎細胞がんにも薬事承認された他、胃がんや大腸がん、子宮頸がんなど、さまざまながんに対する適応拡大を目指した臨床試験が進められている。オプジーボに対し、製薬業界からは「日本発の革新的な新薬」という声が上がる。しかし、薬剤費が日本の総医療費の3割を占める中、中医協では「薬価が高額なままで対象者が増えれば医療保険財源を破綻させかねない」と指摘されるようになった。
そのような中、全国保険医団体連合会(保団連)が米国と英国の薬価を調査したところ、オプジーボの1瓶100㍉㍑の薬価は米国が約30万円、英国は約15万円だった。日本の約73万円は米国の約2・5倍、英国の約5倍だ。オプジーボの薬価を25%引き下げても米国との差も埋まらない。患者1人当たりの年間薬剤費も日本が約3500万円に対して、米国は約1400万円、英国は約780万円だった。
住江憲勇会長は10月6日のマスコミ懇談会で、「高額薬価は国民負担を増やし、製薬会社には莫大なもうけを保証する。それでは国民生活が成り立たない」と批判した。
調査を担当した保団連政策部の小薮幹夫氏は「英国ではこの額でもまだ高いとして、さらに下げられる見通しにある。厚労省の方針は極めて甘い」と指摘した。
小薮氏は薬価算定組織についても、「非公開となっており、議事録もなければメモすらない。その状態を厚労省も知っていた。メーカーの言い値で薬価が決められており、高止まりの構図がある。薬価算定の過程はブラックボックスだ」と述べた。
また、「オプジーボは日本が初承認だったため、他国の事例が参考にできず、薬価の水準が分からなかったかもしれないが、その後、日本だけが高いと分かったならば、改めないと国民皆保険制度が持たない」と指摘。その上で、「オプジーボだけで控えめに見ても年間1万5000人に処方され、年間3000億円から5000億円が必要になる。適応拡大していくと、どれだけかかるか分からない。適応拡大があった時点で薬価を下げるべきだ」と話した。具体的な薬価については「米国並みにするのがギリギリの線」と述べた。
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