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第103回 「荒れる年金国会」を不安視する厚労省

第103回 「荒れる年金国会」を不安視する厚労省

 9月26日に招集された臨時国会をめぐり、厚生労働省内に「荒れる年金国会になるのでは」との不安が広がっている。昨年度、年金積立金の運用で5・3兆円の赤字を出すなどしたことに加え、年金カットを柱とする法案が審議されることになっているためだ。

 9月28日。国会に佐藤勉・衆院議院運営委員長を訪れた塩崎恭久厚労相は、野党が「残業代ゼロ法案だ」と批判、継続審議となっている労働基準法改正案について審議入りを要望し、さらに「年金は一括審議で」と申し入れた。

 年金に関しては、物価上昇時でも賃金が下がれば年金をカットする新たな仕組みや、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織改革などを盛り込んだ「年金制度改革関連法案」が前国会からの継続審議となっている。さらに政府は今国会に、年金の受給資格を得るための加入期間(25年)を10年に短縮する「年金機能強化法改正案」を提出した。塩崎氏の言う「一括」とは、年金カットを批判され、運用損問題をほじくり返されることが確実な年金制度改革関連法案を単独で審議するのではなく、無年金の人を減らす年金機能強化法案も併せて審議することで、野党の批判を和らげる狙いがある。

 ただし、労基法改正案に佐藤議運委員長はつれなく、自民党国対幹部も「政権一押しの、労働者の保護を重視した働き方改革とそぐわない」と切り捨てる。労基法改正案がたなざらしにされるのは確実で、厚労委員会の大型法案は年金だけとなりそうだ。一括審議でも、批判が年金に集中することは避けられない。

 年金積立金の運用損は、2015年度の5・3兆円だけでなく、16年度の4〜6月期も5・2兆円に及んだ。首相の意向で株式の運用比率を50%に倍増させた14年10月からの通算運用成績が、初めてマイナスに転落したことも政府側には痛手だ。民進党の山井和則国対委員長は大幅の運用損に対し「人災だ」と語気を強める。同党代表戦で名を売った玉木雄一郎氏は10月3日の衆院予算委員会で「高齢者の生活が成り立たなくなる」と首相を追及した。

 民進党は、労基法改正案に絡めた働き方改革と、年金を2本柱に据えて追及する姿勢を示しているが、政府が労基法より年金を優先したことで、「事実上は年金に絞られる」とみている。「お年寄りに痛みを強いる法案」を強調する狙いから、年金カットと受給資格期間の短縮の審議を切り離すよう求めている。

 厚労省にとって、年金の伸びを抑える仕組みの強化は悲願だ。しかし、環太平洋連携協定(TPP)の承認、成立を最優先するあまり強行姿勢をちらつかせる与党に、野党は強く反発している。国会会期末は11月30日。TPPで与野党が激しく対立すれば、年金は仮に審議入りできても、途中でストップしかねない。

 ここへきて、来年1月の衆院解散も取りざたされ始めたことも、不安材料となっている。解散風が吹けば、議員は浮足立つ。

 同省幹部は「選挙が間近となれば、与党も『お年寄りに痛みを強いる法案なんて飛ばせ』という空気になりかねない」と気をもんでいる。

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