経営に活かす法律の知恵袋
井上法律事務所所長 弁護士 井上清成
1.チェックシートの勧め
この6月24日、厚生労働省令と医政局総務課長通知によって、「すべての死亡症例の管理者の下での一元的チェック」がすべての医療機関に義務付けられた。当該病院等における死亡及び死産の確実な把握として、当該病院などにおける死亡及び死産事例が発生したことが病院などの管理者に遺漏なく速やかに報告される体制を確保しなければならないのである。
このため実際上は多く、病院などの管理者、つまり院長が医療安全の担当者の1人または数人を指名して、死亡及び死産症例のすべての医療記録をチェックさせることとなろう。
そこで、その指名された医療安全の担当者が一つ一つチェックしたことを示すチェック記録を作らなければならない。院長に簡潔かつ明瞭に報告する意味があることはもちろん、法令を遵守していることのエビデンスを残す意味もあろう。
そこで、「死亡・死産(全例)チェックシート」の作成をお勧めする次第である。
2.法令遵守版のサンプル
とは言っても、「死亡・死産(全例)チェックシート」の書式については決まりがない。各医療機関の実情を踏まえてアイデアを出し、使い勝手のよいものを創意工夫するのがよいと思う。
そこで、とりあえずここでは「法令遵守版」としてのサンプルを提示したい。右記を参考にされるなどして、医療安全の確保にとって有効適切なものにアレンジしてもらえればと思う。
法令遵守版のサンプルは、省令・通知に明記された通りに、医療安全担当者が院長に対して遺漏なく速やかに報告するためのチェックシートである。「速やかに」なので、死亡・死産後1〜2週間を目安とするのがよい。チェック内容については、じっくり精査するというよりも、記録を全て集積して、それらの記載を一通りチェックし、法令や院内規程に沿ってそれらの項目への意見の結論を簡潔にメモしていく、という体裁にした。
3.チェックのポイント
まずは、「医療事故該当性その他のチェック」であり、医療事故調査制度にいう「医療事故」かどうか、である。「死亡・死産の予期」について順序通りにチェックし、それとは別個独立に、今度は「死亡・死産の医療起因性」をチェックしなければならない。どの死亡・死産症例についても、「予期」と「医療起因性」の両方を必ずチェックする必要がある。
次に「意見」であるが、「医療事故に該当の疑い」があれば、当然、次の段階への意見を述べることとするが、医療事故かどうかの「判断」は別途に院長が行う。逆に、「医療事故に該当せず」となっても、そこで終わりではない。院内での検証の必要があるかどうかをチェックしなければならないのである。
最後に、それらとは別途に、遺族からの申出の有無などを勘案して、遺族への説明の必要性についてもチェックしておくとよい。
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