病床めぐり二転三転した国の政策に医療機関の不信募る
都道府県が策定する地域医療の将来像「地域医療構想」について、厚生労働省は今年半ばまでに大筋をまとめることを目指している。2025年時点の「適正な病床数」を定めるのが柱で、重症の急性期や症状が落ち着いた慢性期の人向けに偏っている病床を、地域のニーズに合わせて再編することが目的だ。しかし、「国による病床削減の押しつけ」と捉え、反発する医療機関も多い。構想の成否は見通せなくなっている。
地域医療構想は、14年に成立した地域医療・介護確保法に基づくものだ。団塊の世代が全員75歳以上となる25年に、都道府県が地域で必要となる病床数の目標を立てる。現在、約135万床ある病床の機能別内訳は、▽高度急性期19万1000床▽急性期58万1000床▽回復期11万床▽慢性期35万2000床——。この配分を見直し、それぞれの「必要病床数」を積み上げつつ、全体の病床数は抑えるという青写真を政府は描いている。法律上、構想は18年3月までに作ることになっているが、厚労省は「今夏までに」と都道府県の尻をたたいている。
同法成立時、医療機関の危機感はまだ希薄だった。それが昨年6月、政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(会長・永井良三自治医科大学学長)が「医療機能別病床数の推計に関する第一次報告」を公表したことで空気は一変した。
報告書は、25年に必要となる病床数を今より15万床以上少ない115万〜119万床(高度急性期13万床▽急性期40万1000床▽回復期37・5万床▽慢性期24・2万〜28・5万床)とするとともに、このままでは高齢化が著しい東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、沖縄の6都府県では病床が不足するとした。その一方で、北海道、新潟、富山、石川、九州、四国などでは過剰になると指摘している。
「国による医療費削減計画」か
この数値について、厚労省は当初から「参考値であり、強制はしない」と強調している。だが、医療費の抑制を迫る財務省は「病床削減計画」とみなし、政府内の足並みはそろっていない。こうしたことから、「報告書案の数字は無視できない」と考える自治体は少なくない。多くの医療機関は「国による医療費削減計画」と受け止め、警戒感を示している。
「多くの都道府県庁で、病床の削減目標だと相変わらず考えているところが多い。そういう理解ではありませんね」
2月4日。厚労省の「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」で、日本医師会の中川俊男副会長は、同構想に盛り込む各地の必要病床数について、事務局の厚労省に念を押した。同省の迫井正深・地域医療計画課長は「将来のあるべき医療の姿を考えていただくための素材で、削減目標といったものではありません」と答えたものの、中川氏は「必要病床数という言葉が諸悪の根源。都道府県が病床の削減目標だと思うのはこのネーミングだ。『病床の必要量』と言いませんか」と切り返した。
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