どうにも盛り上がらない参院選である。東京都の舛添要一知事の吝嗇辞任騒動で、有権者が政治に食傷気味なのに加え、与野党の訴えや候補者に既視感がつきまとうためだろう。安倍晋三政権の消費税の10%引き上げ再延期と財政出動は年初からさんざん言われてきたことだし、民進党など野党の主張も新鮮味に乏しい。与野党の主張は「アベノミクス批判」と「民進(主)党批判」が目立ち、誹謗合戦の色合いが強まっている。
「参院選は政権選択じゃないから、そもそも国民の関心はあまり高くない。盛り上がらないのは、安倍首相の路線でいいという暗黙の了解といえるんじゃないか」
自民党幹部は、周囲のスタッフに「気を抜くな」「電話じゃ駄目だ。直接会いに行け」と指示しながら、笑みを浮かべた。
「舛添の悪影響が全国に広がるんじゃないかと心配したが、大丈夫そうだな。舛添はもともと、ワイドショーでのし上がった人だから、しょうがないんだろうけど、テレビはひどいね。おぼれる犬は何とかだ。まあ、自業自得だが」
確かにワイドショーの「舛添たたき」は激しかった。東京大卒の国際政治学者というエリートと、自分の財布からは1円も出したくないという「ドケチ」の対比には、落語のような滑稽味があり、視聴率稼ぎには持ってこいということなのだろう。
舛添氏はかつて参院自民党に所属していたが、「賢さを鼻にかける」など評判は良くなかった。野党転落を契機に執行部批判を繰り広げ、離党の動きを見せたことから、除名処分を受けている。参院自民党には「舛添嫌い」が多く、2014年の都知事選での推薦をめぐっては反対論もあった。それだけに、元同僚らの批判は手厳しい。
「あの人はもともと、自分のことしか頭にない。週刊誌やテレビがたたくのは、人間性が卑しいと分かるからだ。頭がいいだけでは政治はできない、政治は仁術だということを知らしめる先例になればいい」
「都知事選では安倍首相、公明党の山口那津男代表が一緒の壇上で応援演説もしたが、あくまで都政の話だ。国政と関連付けられるのは迷惑。メディアには、『自民党を除名された舛添前知事』としっかり書いてもらいたいね」
沖縄での第一声から逃げた安倍首相 舛添氏とは性質が異なるが、安倍首相も今回の参院選に際し、せこい策を弄している。選挙期間を通例の17日間から18日間に1日延ばしたのがそれだ。参院選の公示日は、投票日が7月10日なら通例6月23日となる。ところが、この日は沖縄の「慰霊の日」に当たる。例年、首相はこの慰霊に参加しているから、安倍首相の第一声は沖縄となる可能性があった。しかし、米軍普天間飛行場移設問題や米海兵隊の元隊員による女性殺害事件で騒然とした沖縄での第一声は混乱が予想された。
そこで、参院選しょっぱなのダメージを避けようと、官邸筋が先例を調べ上げ、日程を1日ずらしたのだ。民進党幹部が語る。
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