患者の社会復帰促す精神科デイケア
150・タカハシクリニック(東京都大田区)
職場でのうつ病や高齢化に伴う認知症の患者数が年々増加し、精神疾患の患者数は400万人以上といわれている。医療法人社団こころの会グループは「地域に根差した心のケア」を目的に、東京・港区や城南地区(品川区、目黒区、大田区)、神奈川県川崎市に計五つのクリニックを展開している。グループの中核で、第1号クリニックでもあるのが、JR蒲田駅近くにあるタカハシクリニックだ。
高橋龍太郎・理事長兼院長は、病院で精神科医を務めていた当時、患者が社会との接点を持ちながら診療を受け、やがて社会に復帰する「ネットワーク医療」の必要性を痛感。そこで、1990年に同クリニックを開院し、ネットワーク医療の要となる精神科デイケアを東京23区で初めて行った。 患者は各種デイケアをグループで受けることで、こころの病気を治し、社会生活への適応力を高めていくのだが、そのプログラムはユニーク。料理やアート制作、奇術や映画観賞、卓球やジャズダンスまであるのだ。講師はプロの作家や女優などと本格的。高橋理事長は「プログラムが楽しければ、患者さんは通院し続けてくれますし、治療効果も上がります」と話す。
この他、夕食(給食サービス)を取りながら、患者同士が「団らん」の時間を過ごすナイトケア、アルコール依存症患者を対象にしたアルコールデイケア、対象を女性に限定した女性デイケア、職場や人間関係でストレスを感じている社会人を対象にしたリワークショートケアと細やかなケアをそろえている。
また、往診や訪問看護、訪問指導も行っている。 目を引くのは、同クリニックをはじめ、グループのクリニック内に飾られている現代アートの数々。それもそのはず、高橋理事長は「高橋コレクション」で知られる人物。広くて殺風景だった施設の壁にリトグラフを飾ったのをきっかけに、現在では村上隆、奈良美智、草間彌生、横尾忠則、森村泰昌、荒木経惟、蜷川実花など日本の現代アーティストの作品を2000点以上も収蔵。毎年国内外5~6カ所で展覧会を開いているほどだ。
高橋理事長は「財政的に厳しい現実があるだろうが、24時間、多職種による協働チームで対応する日本版ACT(地域医療および各種生活支援を含めた包括的地域生活支援プログラム)を行えるような医療拠点になれれば」と話す。
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