第93回 若い医師たい
今年も受験のシーズンである。
昨年度は私の周囲では多くの医学部合格者が出た。今年はどうだろう?
年々医学部医学科の希望者は増え、難易度も高くなっているようだ。
早くも今年の流行語大賞の呼び声高い、「国会議員の口利き」も今年ばかりは自粛されたであろうから、なお一層のガチンコ勝負であったに違いない。
それだけに全国津々浦々でドラマが生まれていることだろう。
前期は絶対ダメと思って後期の宿探しをしていたら合格した! 私立も国立も全部ダメ、と思っていたら3月30日の朝に追加合格の電話が自宅にかかってきた! 身近でもいろいろな話を聞く。
どこかの国の総理大臣は1回も受験勉強をしたことがない、ということだが、受験勉強をくぐり抜けた人にとって、受験はドラマである。医者なら全員がそうだ。
受験にまつわる話がみなドラマチックに聞こえるのは、自分もそうだったからだろう。だから、受験生の感動や絶望にすぐ感情移入できる。
そして皆必死だから、個性満点の面白いストーリーが出来上がる。一生の語り草なのである。
受験科目をどう選んだか? そして志望校はどう選んだか? そもそも医学部受験をどう決めたのか?
自分の受験ストーリーを思い出すと、判断や選択、行動は、浅はかな子供じみたものであったとしても、自主的であったことを思い出す。
誰の受験ストーリーも皆そうだ。受験を含めた進路決定は自主行動の極致といえる。もちろん、高校を卒業する時の通過儀礼なのだから当たり前、ともいえる。
医学部に入学した後、卒業の時の初期研修、そして専門診療科の決定と、自主性が100%求められる。
情報が即座に伝わる時代である。
昔のように大学医学部という環濠集落のごくごく限られた情報と狭い狭い世界に身を任せ、「何となく……」で流されて知らない間に医局に入っていた……ということなどあり得ない。
今、病院で見かける若い世代の医師たちは、独立独歩、自主独行の強者たちと見受けられるのである。いや、そう認識すべきだと思う。
「そうかなぁ? あまり元気がないように見えるけどなぁ……」
「とんでもないやつが多いよ。第一礼儀知らずだ!」
おじさんたちの中には自分の若い頃のことをすっかり忘れてしまう人が多い。
今の若い世代の医師たちは大変だ。
新専門医制度がスタートする。行政に医者どもを隷従させるための制度である。何から何までがんじがらめ。自由がない。一番問題なのは、途中で「抜けられない」点だ。「あっ! この指導員ムリ! タバコは吸うし、勉強してない!」と思っても逃げられない。
かわいそうなのは、研修とは名ばかり、我慢してバカに仕えなければならない、という可能性があることだ。
貧相で知識がなく、志もない、第一に度胸がない。卑怯でせこく狭量。
「なんでこんなやつの下で」
そういう事態にならないように、とにかく指導医の技量と人間性をまず担保すべきではないだろうか。
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