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ウエルシア関東 イオン幹部も関わったインサイダー・株価操縦の疑念

 ほかの大手ドラッグストアと同様、ウエルシア関東(さいたま市)も1956年に個人が創業した薬局としてスタートした。74年に株式会社に改組。90年代以降、ほかのドラッグストアとの合併を重ねて規模を拡大。2000年にはイオンと業務提携をし、01年にジャスダック上場、04年には東証2部上場を果たした。

 08年には高田薬局(静岡市)との持ち株会社グローウェルホールディングス(東京・千代田区)を設立。「高田薬局をマツモトキヨシグループから離脱させるため高田隆右会長をグローウェルHDの社長に据えたが、会長に就いた鈴木隆之・ウエルシア関東会長が実質的な支配権を握っている」と業界関係者。持ち株会社の実質的な掌握により、ウエルシア関東は規模拡大の新たなステージに上った。

 一方で08年は、寺島薬局(茨城県つくば市)を株式公開買い付け(TOB)により子会社化したことが、汚点になるかもしれない事態を招いた年でもある。TOBから3年以上経つが、当時から噂されていたインサイダー、株価操縦の疑念がますます深まっているのだ。オリンパス問題もあり、金融庁、証券取引等監視委員会、両社の本社のあるさいたま地検と水戸地検、さらには東京地検特捜部が強い関心を持っているようだ。
グローウェル社名変更のリスク

  グローウェルHDは2012年に会社名を「ウエルシア」に変更することにしている。グループの中核となっているウエルシア関東の店舗名を採用し、ブランド力を強化しようというのだ。「疑念」が「事件」になった場合、「ウエルシア」の店舗名はブランドどころの話ではなくなるだろう。

 しかも、社名変更はイオンとの関係にも溝をつくりかねない。グローウェルHDは、イオンと資本関係にあるドラッグストアの連合組織「ハピコム」(27社加盟)のメンバー。"盟主"であるイオンとしては、ハピコムを名乗ってほしいはずだ。

 だが、「鈴木氏はイオンに面従腹背で、距離を置いている。イオンは利用するだけの存在」と前出の業界関係者。それは、グローウェルHDに対するイオンの出資比率に現れているという。イオンは筆頭株主であるが、出資比率は29.3%しかない。約35%以上ないと、営業譲渡やM&A(企業の合併・買収)などの重要案件を阻止できない。鈴木氏はイオンには3割以上の株式をもたせないようにしているというのだ。

 グローウェルHDは現在、東北、関東、中部、近畿に約700店舗を展開。積極的な出店で、連続最高益の更新を目指している。12年8月期の連結業績は、売上高3000億円(前期比10.8%)、営業利益121億円(同11.4%)、経常利益126億円(10.6%)といずれも二桁の増収増益を見込んでいる。しかし、「11年8月期は震災の復興特需。消費購買力が低迷している状況下、以後はそうはいかないのでは」との冷ややかな声が業界から聞こえる。

 推進力となるのは調剤併設店。併設率を7割強まで高め、調剤で売上高の約1割に当たる306億円を計画している。調剤併設店のビジネスモデルはウエルシア関東の店舗。グローウェルHDはグループ各社へ導入を促している。しかし、国の医療財政が厳しい中、調剤報酬削減の懸念や固定費を増やす経営戦略に不安感を抱く金融機関もある。また、ウエルシア関東の店舗運営には問題がある。調剤併設店、深夜営業店がともに8割を占めているのが特徴だが、薬剤師不在の営業や無資格者による調剤などが内部告発されているのだ。

デューデリを行わない異常なTOB

  ウエルシア関東が抱える最大の問題は、寺島薬局のTOBをめぐるインサイダー・株価操縦の疑念。子会社化直後に解任された寺島薬局の元社長と元副社長が09年1月、同社を相手取り不当解任による損害賠償訴訟をさいたま地方裁判所に起こしている。この民事裁判によって疑念の全貌が浮き彫りになってきた。裁判の傍聴と関係者への取材を通して分かってきたことは次のようなことだ。

 事の発端は、寺島薬局のオーナーで取締役相談役だった寺島孝雄氏(現顧問)が08年7月、趣味の農業に専念するため、一族の保有株を売却したいと役員に相談を持ち掛けたことだった。

 直近の5月、6月の株価は700円台だったが、寺島氏は最低売却価格として1株1400円を希望した。しかも、株式譲渡益課税の時限立法による優遇税制を活用するため、同年中の手続きの終了を望んだ。

 役員らはメインバンクの三井住友銀行や大和証券エスエムビーシーと相談したが、特段の好材料がない中では、TOB価格は高くても1000円程度。自己資本(60億円)ベースによる価格算定でも1350円が限界だった。1400円にするための残された手段として計画されたのが、役員が金融機関の支援を受けて株式を取得するMBOだった。調剤や介護も含めた地域密着型の社会インフラとしてドラッグストアを位置付けていた「てらしまモデル」は、金融機関から評価されていたのだ。

 隠密裏に進めた計画だったが、7月から株価が上がり始め、9月には1000円台に上昇。寺島氏は9月16日、「1株1500円以上」というウエルシア関東によるTOB提案書を役員らに示し、同社へ株式を売却すると言い出した。ウエルシア関東は同月22日、買付価格を1株1976円で寺島薬局へのTOBを行うと発表。翌日の新聞には、同社に16%を出資するイオンも賛同していることが報じられた。

 当初予想されたTOB価格の約2倍は異常な高値だ。M&Aの際、通常行われるデューデリジェンス(企業価値評価)は実施されなかった。

 11年4月21日の裁判で、寺島薬局元社長の池野隆光・同HD副社長兼ウエルシア関東社長が証言に立ったが、デューデリジェンスやTOBについて「私は直接関係ありません」「知りません」と発言。1976円のTOB価格の決め方についても「私は決めておりませんので分かりません」。ついには「別な人でも呼んでくれませんか」と発言する始末。

 池野氏はTOB実施当時、グローウェルHD取締役でウエルシア関東副社長、TOB完了後の08年12月には社長含みで寺島薬局顧問に就き、翌09年1月に社長になった人物。「知らなかった」という発言は、取締役として重大な善管注意義務違反を犯したことを明らかにしたようなものだ。

11年12月7日の裁判では、「口封じ」のため解任されたといわれる寺島薬局の元社長が証人尋問に立ち、「(08年)8月に大手ドラッグストアの社長から寺島氏が株式を売りたがっているという話を聞いたが、本当なのかと聞かれた」と証言。寺島氏が役員にMBOを進めさせていた一方で、ウエルシア関東以外の大手ドラッグストアにもTOBを持ち掛けていた実態が浮き彫りになった。

 元社長は「寺島氏はウエルシア関東に株式売却を売り込む際、我々のMBO案をもって株価の吊り上げを迫ったのではないか。MBO案だと買い取り価格は1400円だということを承知の上で、5年後ぐらいに再公開した際予想された2000円の株価を示し、ウエルシア関東に1976円というTOB価格を提示させたのではないかと思う」と核心を突く発言をした。

 約500円の株価のアップで約18億円が上乗せされ、寺島一族が手に入れた株式の売却益は約60億円。一方、ウエルシア関東は約100億円を投じて寺島薬局を買収したものの、のれん代や金利負担が年間5億円ほど生じているという。「規模の拡大を目的に寺島薬局を買収したが、1株1400円が限度だったことを知らなかった鈴木氏は寺島氏にだまされたようなもの」と事情通は話す。

 ウエルシア関東に取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった。

イオン元財務部長が社外取締役に

  注目すべきはイオンのかかわりだ。TOB当時、イオン財務部長やウエルシア関東社外監査役などを務めた早水恵之氏(現イオンディライト常務)を寺島薬局の社外取締役に派遣していた。早水氏はイオン、ウエルシア関東、寺島薬局をつなぐ要の人物。業界関係者は「寺島一族、イオングループの拡大だけを考え、グローウェルHDの第三者株主の利益を棄損した。イオンの企業統治能力の欠如を示している」とあきれ顔だ。

 しかも、このインサイダー、株価操縦の疑念の構造は「何者かがアレンジした売り手と買い手が取引し、手を組んだ。かかわったのは企業や関係者ら数十人。金融証券市場でもまれに見る犯罪行為」(前出の事情通)。

 元社長が証言に立った裁判では、揚げ足取りのような質問を続ける寺島薬局側代理人を裁判長が制止。反論する代理人に、「裁判指揮権に対する異議か」と語気強くたしなめる異例の事態が印象に残る。裁判長は両者に対し、次回裁判での和解を勧告した。このことは、元社長と元副社長の解任を適正とする寺島薬局の主張を事実上、退けることになったといえる。

2012年1月 4日 09:35 | イオン・ウエルシア関東・寺島薬局・日本チェーンドラッグストア協会・経済・グローウェルホールディングス

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