「プラマイゼロ」も困難な12年度同時改定
攻防激化。2012年度診療報酬改定を巡る駆け引きの現状だ。12年度は6年に1度訪れる、介護報酬との同時改定の年でもある。東日本大震災の復興に巨費を要する中、「ネットでプラスマイナスゼロに」が本音の厚生労働省。これに対し、社会保障費抑制になりふり構わない財務省は「厚労省シフト」の人事を敷く。本気でマイナス改定に踏み込む意向だ。
0.19%増──。小泉純一郎政権以降抑えられてきた診療報酬は、政権交代直後の10年度改定で10年ぶりにネットでプラスとなった。だが、これは民主党議員や財務・厚労両省、日本医師会といったメーンプレーヤーたちのくびきとなっている。
「とてもプラス改定の状況にはありません」。中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の小林剛理事長は10月4日、12年度の全国平均保険料率(10年度9.50%)が10.20%に達すると公表した記者会見で、診療報酬増への反対を表明した。診療報酬を0.1%増やすと、医療費を340億円押し上げ、うち170億円を保険料で賄わねばならない。協会けんぽは料率が0.009%増になるという。
ただでさえ保険料が10%を超えるのに、さらに上げろというのか──。そんな声が協会けんぽの腹の内にある。厚労省保険局も「民主党政権は社会保障費の自然増を認めている。単価アップの診療報酬増は不要」(幹部)と同調している。
ただし、民主党政権は前回、ネットでのプラス改定を実現させ、それを「政権交代の成果」と喧伝した。小宮山洋子厚労相は「少しでも上乗せしたい」と、ネットでのプラス改定に意欲を示している。そこで厚労省は本体部分はプラスとしつつ、薬価のマイナスで相殺する「プラスマイナスゼロ」改定を模索している。
こうした動きを見据え、財務省は着々と対抗策を練っている。診療報酬の0.1%増は国庫負担の90億円増につながる。この不況下で10年度に続いてプラス改定となれば、増額が規定路線となり、マイナス改定に戻れなくなる──。そう考えるからこそ、今夏の人事で早々と手を打った。厚労部門の主計官を2人に増員し、主査も1人増とした。
また、小泉政権などでマイナス改定を主導してきた厚労担当主計官、主査を重要ポストに配置してきた。初の本体減額を含む02年度改定(2.7%減)を実現させた主計官・田中一穂氏は現理財局長で、当時の主査・新川浩嗣氏は厚労担当主計官に回った。06年度改定(3.16%減)時の主計官・福田淳一氏は主計局次長、08年度改定(0.82%減)時の主計官・迫田英典氏は内閣府審議官として、社会保障と税一体改革の行方を押さえる。
官邸筋は「徹底して社会保障に切り込み、消費税増税への布石を打とうということだ」と読む。
財務・厚労両省の狭間で苦心しているのが日医だ。状況が不利なのは明らかとあって、震災を理由に「全面的な改定は先送りすべきだ」と主張している。だが、厚労省は顧みず、医療機関の経済状況を調べる医療経済実態調査の集計を進めている。全体像は増収基調とみられ、同省幹部は「デフレで民間は賃下げ続きなのに、医療関係者だけ大きく収入を増やす理屈はない」と言い切る。
それでも、民主党内のマニフェスト重視派が増額改定を求めてくるのは必至だ。同党政策調査会などの圧力を背に、厚労省が財務省から本体部分の一定幅の増額を引き出
せるか否かに関係者の視線が集まる。
0.19%増──。小泉純一郎政権以降抑えられてきた診療報酬は、政権交代直後の10年度改定で10年ぶりにネットでプラスとなった。だが、これは民主党議員や財務・厚労両省、日本医師会といったメーンプレーヤーたちのくびきとなっている。
「とてもプラス改定の状況にはありません」。中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の小林剛理事長は10月4日、12年度の全国平均保険料率(10年度9.50%)が10.20%に達すると公表した記者会見で、診療報酬増への反対を表明した。診療報酬を0.1%増やすと、医療費を340億円押し上げ、うち170億円を保険料で賄わねばならない。協会けんぽは料率が0.009%増になるという。
ただでさえ保険料が10%を超えるのに、さらに上げろというのか──。そんな声が協会けんぽの腹の内にある。厚労省保険局も「民主党政権は社会保障費の自然増を認めている。単価アップの診療報酬増は不要」(幹部)と同調している。
ただし、民主党政権は前回、ネットでのプラス改定を実現させ、それを「政権交代の成果」と喧伝した。小宮山洋子厚労相は「少しでも上乗せしたい」と、ネットでのプラス改定に意欲を示している。そこで厚労省は本体部分はプラスとしつつ、薬価のマイナスで相殺する「プラスマイナスゼロ」改定を模索している。
こうした動きを見据え、財務省は着々と対抗策を練っている。診療報酬の0.1%増は国庫負担の90億円増につながる。この不況下で10年度に続いてプラス改定となれば、増額が規定路線となり、マイナス改定に戻れなくなる──。そう考えるからこそ、今夏の人事で早々と手を打った。厚労部門の主計官を2人に増員し、主査も1人増とした。
また、小泉政権などでマイナス改定を主導してきた厚労担当主計官、主査を重要ポストに配置してきた。初の本体減額を含む02年度改定(2.7%減)を実現させた主計官・田中一穂氏は現理財局長で、当時の主査・新川浩嗣氏は厚労担当主計官に回った。06年度改定(3.16%減)時の主計官・福田淳一氏は主計局次長、08年度改定(0.82%減)時の主計官・迫田英典氏は内閣府審議官として、社会保障と税一体改革の行方を押さえる。
官邸筋は「徹底して社会保障に切り込み、消費税増税への布石を打とうということだ」と読む。
財務・厚労両省の狭間で苦心しているのが日医だ。状況が不利なのは明らかとあって、震災を理由に「全面的な改定は先送りすべきだ」と主張している。だが、厚労省は顧みず、医療機関の経済状況を調べる医療経済実態調査の集計を進めている。全体像は増収基調とみられ、同省幹部は「デフレで民間は賃下げ続きなのに、医療関係者だけ大きく収入を増やす理屈はない」と言い切る。
それでも、民主党内のマニフェスト重視派が増額改定を求めてくるのは必至だ。同党政策調査会などの圧力を背に、厚労省が財務省から本体部分の一定幅の増額を引き出
せるか否かに関係者の視線が集まる。
2011年11月 1日 09:30 | 中医協・医師会・医療・医療政策・厚生労働省・政治


