浜六郎の臨床副作用ノート~オマリズマブ:アナフィラキシー~
浜 六郎 NPO法人 医薬ビジランスセンター(薬のチェック)代表
オマリズマブ(ゾレア、ノバルティス)は日本では2009年1月に承認された。同年3月から薬価収載され、販売が開始された。日本での適応症は「気管支喘息」である(ただし、既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)。フランスでは「抗IgE抗体陽性で、コントロール不良の重篤な喘息患者に対する既存の喘息治療に追加使用することを目的とした薬剤とされている。独立情報誌Presc-rire International(フランス、英文、11年4月号)の記事1)と、アナフィラキシーを中心に詳細に解説したTIP誌(11年5月号)2)を要約して紹介する。
効力(efficacy)1):07年以降の新データなし
07年に、オマリズマブの使用に関する最初の臨床データを調べた後に、プレスクリル誌は、害の可能性が有益性を上回ると結論した。有効性は不確かであり(せいぜい、2.5年に1回の割合で救急室受診を減らすことができた程度)で重篤な害があった。07年以降、米食品医薬局(FDA)は成人での有効性を示す2つの市販後研究をメーカーに対して要請しているが、未公表であり、少なくとも10年半ばまでに、オマリズマブの有益性に関する新たな臨床データはない。
アナフィラキシー2)
最も深刻なのはアナフィラキシーが高頻度で生じる点である。FDAでは03年から06年12月の間にオマリズマブ使用後生じた124件のアナフィラキシーの報告(自発報告および論文報告)を分析した。この間の使用推定患者数約5万7300人を分母にすると、460人に1人である。主に自発報告のため、実際の頻度はさらに高いと思われる。ACTH.Z(一般名酢酸テトラコクサチド亜鉛、商品名コートロシン(Z))の頻度約200人に1人(0.45%)以外に、オマリズマブの頻度に匹敵する薬剤はないのではないか。これほどの高頻度のアナフィラキシーは、薬剤としての許容限度を超えていよう。
呼吸器症状90%はアナフィラキシーのため当然である。ショックまたは失神が14%、15%が入院、約4割が1回目で生じ、2回目と3回目で約3割、4回以上使用後も約3割あった。中には1年間以上使用後にアナフィラキシーを生じた例も報告されている。
特徴的なのは、注射後アナフィラキシー症状出現までの時間に大きな幅があることである。時間が判明している112人のうち、約4割が30分未満、約3分の2が2時間以内、約3分の1は2時間以降に生じていた。1日以降も5%あった。短時間で生じる例は典型的なアナフィラキシーで、呼吸困難や血圧低下を伴うが、症状の発現が6時間を超えるような例では、徐々に症状が進行していたという。例えば、54歳の男性では1回目の使用1時間後にかゆみと熱感があり、夕方には呼吸困難と喘息発作があり、翌日には血管浮腫を生じた。
遅発性のアナフィラキシーは、低浸透圧性ヨード造影や、βラクタム剤などで生じ得ることが報告されていたが、最近のモノクロナール抗体の出現で、頻繁に報告されるようになってきている。例えば、インフリキシマブ(レミケード)、トラスツズマブ(ハーセプチン)、daclizumabおよびbasiliximab(いずれも抗インターロイキン.2抗体)などである。
オマリズマブについていえば、最高血中濃度到達時間が長いことが重要な原因として指摘されている。最高血中濃度到達時間(Tmax)は平均7日で、血中消失半減期が平均21日(±3.5日)と極めて長い。
もともと喘息患者ではIgE高値のアレルギーの人が多く、それらの人に異物タンパクを注射すればアナフィラキシーが生じやすいのは当然である。460人に1人以上の頻度は重視しなければならない。
なお、メーカーによれば、日本では09年3月薬価収載以降、11年4月までの約2年間で、約2000人に使用されたとのことである。機構の情報によれば、アナフィラキシー反応は1件であるが報告されている。このほか、アレルギー性肉芽腫性血管炎、肝炎、肺炎なども各1件報告されている。
フランスの申請資料概要(SBA)では、他の免疫異常として、血清病反応、好酸球増多症候群、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)なども報告されている1)。
発がん性
7951人の患者を、オマリズマブによるがんの発症の可能性を調査することを目的として5年間追跡した市販後調査がある。非メラノーマ性皮膚がんを含むと有意でなかったが、FDAは、この研究の妥当性について検証し、曝露期間が短かったために発がんリスクがとらえられなかった可能性を指摘している1)。
通常行われるように、非メラノーマ性皮膚がんを除いたがん発症の比較が重要であり、これで比較すると、オマリズマブ群0.38%(16/4127)、対照群0.09%(2/2236)であり、リスク比4.33(95%信頼区間1.11.16.92)で有意である(Fisherの直接確率法:two sidedで、p=0.0456)。がん発症の頻度の高さも重大である2)。
感染症が高頻度に
中間解析では、感染症についても解析し、オマリズマブ群(211例、4.2%)が対照群(73例:2.5%)に対して頻度が高かった1)。統計解析をFDAは報告していないが2)リスク比は1.65(95%CI1.27.2.15)であった。カイ2乗検定でも、Fisherの直接確率法(two sided)でも、p値は0.0001であり統計学的に有意である。感染症のリスク比のp値の小ささから、関連は確実であり、免疫抑制が生じていること、従って、発がんも因果関係があると見るべきである。
その他の害
重篤な循環器系イベントの合計は、オマリズマブ群1万1267人年、対照群6295人年中11.6/100人年、6.4/1000人年、リスク比1.8(95%CI1.3.2.8)で有意であった。不整脈は、オマリズマブ群3.3/1000人年、対照群1.6/1000人年、リスク比2.1(1.1.4.9)で有意であった。脳血管疾患は、発症数は少ないものの、リスク比は高い。脳血管疾患
全体では16人対3人、リスク比=3.0(1.0.無限大)、一過性脳虚血発作は、7人対1人、リスク比=3.9(0.7.無限大)であった。
神経系:1%以上の頻度で認められた害作用として、有意であったのは、神経系疾患55件(1.1%)対13件(0.5%)、リスク比=2.42(1.34.4.39、p=0.003)であった(詳細は不明)。
呼吸器系障害(胸郭、縦隔障害を含む)は、456件(9.0%)対151件(5.2%)、リスク比1.73(1.45.2.07、p<0.0001)であり、オマリズマブ群に確実に多く生じていた。呼吸器系障害の詳細については、明瞭な記載がないが、これほどの大きな呼吸器系障害(イベント数)と、救急受診回数が2.5年間に1回分少なかったという点は大きく矛盾している。
血小板減少:臨床使用における血小板減少および、それに伴う出血イベントの正確な頻度は知られていないが、動物実験では、血中濃度との関連(確実な用量.反応関係)を認めている。メーカーは人での関連を認めようとしていないが、因果関係は確実である。
流産の危険:オマリズマブは、胎盤関門を通過する。7951例の患者の調査でオマリズマブ群94人の妊婦から6人の流産があり、54人の対照群からは1件であった。妊婦にオマリズマブは使用すべきでない。。
価格と価値の乖離<
価格は150mgが7万503円。4週間ごとに150mgで月7万円余りを要する。IgEレベルと体重から、2週間毎に300mg(375mg)が必要な人なら約28万円(35万円)が4週ごとに必要である。費用に見合う価値があるとはいえない。
参考文献
1)Prescrire International 2011:20(115):90.92(TIP誌2011年5月号はその翻訳)
2)正しい治療と薬の情報(TIP). 2011:26(5)73.5
2011年9月27日 11:34 | 浜六郎の臨床副作用ノート


