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中長期型支援が促進するポスト3・11地域医療の変容①

 「東北だけでなく、地域は同じことですけど、国土の平均的な発展を図っていくにはどうしたらいいかということ。その一つが地方分権、地域主権です。本当に地方が自立できる制度にすること」
 民主党元代表・小沢一郎氏の言葉。東日本大震災からの復旧・復興の過程で東北地方の姿をどうしていけばいいのか。7月28日、東京・平河町での記者会見で本誌の質問に応えた。岩手県奥州市を地元とする政治家の言葉にもう少し耳を傾けてみる。
 「会社でも何でもなぜ東京に集まるのか。東京に来ないと、仕事にならないからです。最終的に霞が関のはんこをもらわないと、何もできないんですから。それを地方でもできるようにすりゃいい。簡単なんです」
 「欧米では世界的な大企業が地方に本社を置いている。それで用が足りるから。制度上、そういう地域社会にすればいい。地方は人柄も純朴で土地や賃金も安いかもしれない。企業の進出の条件は非常に良い。根本を変える必要がある。当面、企業が行ったところに優先的に税金をまけるとか、そういうちゃちな話じゃ駄目です。制度そのものを変えることで全国が平均的な発展を期す。これが僕の基本的な考え方です」
 「政治とカネ」問題の象徴で「政策より政局」「独断専行」の人といわれる小沢氏。明快な復興論だった。
 震災からの復旧・復興を医療を中心とする視点を通じて半年近くお伝えしてきた。この間、明らかになってきた支援の条件を列挙する。
①中長期的な射程
②地域の医療需要の把握
③基礎自治体の牽引力
 支援は息の長いものにならざるを得ない。これからしばらく、地域に根を張って活動している医療支援の実像に目を向けていくことにしよう。)
「被曝村」と「原爆利権」
 補正予算がゆがめられている。編成の過程は完全に従来型に堕した。もはや政権交代時の熱気はない。
 問題はここからだ。2011年度第2次補正予算。例えば、福島県には〈原子力被災者・子ども健康基金〉の名目で約962億円が計上されている。総体で2兆円規模ということを考えれば、相当な額である。つまり、菅直人政権は「地域医療のために」2次補正で放射線対策に1000億円近くを付けているわけだ。
 一方、被災地である浜通り地区では入院を規制。民間病院の経営状況を直撃していることは前号で触れた。南相馬市民病院では毎月1億円の赤字。現実には人件費を大幅に削減しながら、回している状況だ。前記の補正をどう考えればいいのだろう。
 「長崎大学・広島大学を中心とした『被曝村』主導で決まったものです。今、被災地の知事はオールマイティー。被災地への支援はすべて県庁に流れる。県庁は集まった金を丸投げする。『土着権力』がたかる構図が見られる」(国立大学教授)
 被災地で実際に求められているのは一貫して「診療」。だが、動いているのは「調査」でしかない。
 「長崎大学医学部教授から福島県立医科大学副学長に転じた山下俊一氏。彼が担っているものは、『原発利権』でしょう」(同前)
 「皆さんはこの(放射線)分野に対して、間違いなく世界一の学識を有するようになる」「放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません」「広島・長崎に次ぐ国内3番目のヒバクシャを生み出した福島県」──山下氏はテレビ出演や講演会場、インターネット上で常軌を逸した発言を多数重ねていった。
 長崎大は唯一の「被曝大学医学部」を擁する。広島には当時、大学がなかった。戦後、米国が現地調査に入る。高度成長期に入ると、1957年に旧科学技術庁が放射線医学総合研究所を設立。75年には旧厚生省・外務省が放射能影響研究所を造る。旧文部省は長崎・広島大を拡充。両大学はCOE(文部科学省科学研究費補助金の特別推進研究)の常連でもある。こうしてこの国の「放射能村」は版図を着実に広げてきた。
 毎年、ここには何十億円という公費が降り注いでいる。では、今回の震災で彼らは何をしたのか。
 「『安全だ』と断言しながら、多くの被災者は被曝し、避難を余儀なくされた。その傍ら、彼らは余った金で好きながん研究をしていただけではないのか。あくまで基礎研究者であり、医師ではないことが明らかになりました」(同前)
 長崎や広島はすでに国際的ブランド。村社会を構成し、新規参入の障壁を築いている。「本当の被曝医療」の担い手はそこにはいなかった。)
被災地に火事場泥棒出没
 福島県庁に充てた約1000億円の1%でも浜通りの病院の運転資金にできないか。そうすれば、少なくとも南相馬市の病院が倒れずに済む。
  「被災地で税金のおこぼれにあずかろうとするやから。火事場泥棒に近い精神構造です」(同前)
 宮城県はどうか。3次補正で同工異曲が確認できる。震災復興と連動した「東北メディカルバンク」構想がそれだ。沿岸部は人口の移動が少なく、3世帯家族が多いため、垂直ゲノムコホート研究も可能という。
 東京・港区の山王クリニック院長、山王直子氏は夫の石井肇氏とともに3月12日から被災地に展開。「まごのて救援隊」として〈小規模ならではの小回りのきいた〝かゆいところに手が届く〟〉(同救援隊ウェブサイト)支援を続けてきた。
 山王氏の活動拠点のすぐそばでゲノムのデータベースを作ることを地域住民は望んでいるのだろうか。これも「丸投げ」の類型に見える。
 「メディカルバンクのような国際的競争は人材に余力のある地域でなければ無理。医師不足で困っている被災地は不適でしょう」(同前)
 東北大学や福島医科大学が被災地で立ち回る以上、表だっての批判は難しい。「復旧・復興」が錦の御旗となるからだ。形を変えた地域独占が幅を利かせている。県内に1カ所しかない医大・医学部が弊害を生む。これ以上皮肉な構図はない。
 地域が最も望んでいることは医師の供給だ。急性期は短期派遣で済んでいたが、今後は長期が前提。
 「まず国にできることは厚生労働省医系技官の出向命令。被災地で求められている医療は専門技術ではない。技官でも対応可能。その程度のこともできないのであれば、医師免許を剥奪すべき」(医療行政研究者)
 では、民間にできることは何か。
 「現地が望んでいるのは、行く側と迎える側の双方が幸福になれる事例。これを丹念に組み合わせていく必要がある」(支援に当たる医師)
 民間の支援に関しては診療報酬増での支援も必要。一方で補助金が現場に回っていない現実もある。厚労省や福島県はプロフェッショナルとしてどう受け止めるのだろうか。
 現地に根を張った医療者の支援。本誌も腰を落ち着けて追っていく。。

2011年9月12日 14:55 | 医療政策・厚生労働省・政治・行政

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