武田薬品工業の品行⑪ ~「長谷川代表幹事」誕生で腐臭放つ経済同友会~
〈1946年、日本経済の再建のため、若手経営者を中心につくられた経営者団体。企業経営者及び経済団体役員が、個人の資格で加入するのが特徴。国内外の問題に対して国民経済的立場から意見を発表する〉(『知恵蔵2008』朝日新聞社)―。由緒ある経済団体が今また未曾有の国難を前にし、トップ交代。これを機に内部から腐臭を放ち始めている。その名を経済同友会という。
同友会流CSRに反する長谷川経営
4月27日、同友会は通常総会を東京・日比谷の帝国ホテルで開催。武田薬品工業社長・長谷川閑史の新代表幹事への就任を正式に決定する。終了後には朝毎読をはじめ15社から成る「経済団体連合会記者会」を前にお手盛り記者会見が開かれる。28日付朝刊の「ひと」欄に向けて「趣味は」「家族構成は」といった鋭い質問が並ぶのだろう。
本誌も同友会広報に会見出席を申し出た。5日目、5度の電話でやっと応対に出た広報担当者は「キャパシティーの問題でお断りします」。
立ち見でもオブザーバーでもいいと食い下がると、「そういう問題ではなくて」と一笑。収容人員が問題なら広い場所を取っては、と進めたが、「どれくらい参加されるか分からない」という。
首相会見すらオープン化されるこのご時世に記者会見開放の「予定はない」(広報)。ここまで知恵のない対応をする職員を抱えるしかない広報戦略委員長兼担当副代表幹事・前原金一(元住友生命常務)には心からの同情を禁じ得ない。
同友会といえば、企業の社会的責任(CSR)については常日ごろからご高説を垂れてきた。4月4日には社会的責任経営委員長・水越さくえ(セブン&アイ出版社長)名義で「グローバル時代のCSR.変化する社会の期待に応え、競争力を高める.」なる報告書を出した。本文中の〈宣言3〉では〈市民や市民社会との連携によりCSR活動を推進する〉と高らかに歌っている。長谷川はこの文言を果たしてどう読んだのだろうか。
税収増をちらつかせ自治体首長の口を封じ、60億円超もの補助金を引き出す。津波や液状化の被害が見込まれる住宅密集地の近隣にP3施設を含む「工場」を建設。誘致決定から竣工まで必要な情報はほとんど出さず、「絶対安全」を強弁。裏で手を回し、地域を分断する。なし崩しに建設を強行。土壇場で実験動物の焼却完全外注化をぶち上げ、恩を着せる。「安全協定」は単なる作文。住民も交えた協議会の開設をはじめ、その他の重要な提案には一切聞く耳を持たない―。武田イズムに〈市民や市民社会との連携〉は皆無だ。
切羽詰まった住民有志は4月13日、東京・丸の内の経済同友会に赴いた。長谷川にあてた「公開質問状」を手渡すためだ。事前に連絡を取ったところ、「受け取らず」の返事。だが、直接足を運ぶことに一縷(いちる)の望みをかけ、10人超が集まった。
ところが、である。同友会が入居する日本工業倶楽部5階のエレベーターホールで住民を迎えたのは守衛2人と屈強な強面中高年男性だった。
この男、氏素性は明らかにしない。どういうわけか住民を高圧的に排除しようとする。写真撮影を試みた女性の一人は恫喝(どうかつ)を受け、カメラを引っ込めた。本誌の取材に対しても撮影や録音をやめるよう声高に迫ってきたが、無視。カメラを向けるとすごすごと退散していった。あの同友会が単なる質問状に過剰反応し、所轄の丸の内署警備部に公安刑事の出動を要請した―などと考えたくはない。ともかく何とも妙な男ではあった。
質問状の受け取り拒否を受け、有志は付近の路上でビラを配布。くだんの男と関係者2人の「行動確認」が付いた。明らかに行き過ぎだ。
2億400万円払っても下水道利用
4月13日にはもう一つ大きな動きが見られた。「武田薬品研究用下水道管敷設費用違法支出差止訴訟」(裁判長:福田剛久/裁判官:田川直之・東亜由美・石垣陽介)の控訴審第3回が東京・霞が関の高等裁判所822号法廷で開かれた。1978年、武田は藤沢市内で操業する50数社とともに「工程系排水は下水道に入れない」との協定を結んでいる。旧アリナミン工場時代、武田はこの協定をほかの企業同様に遵守してきた。
湘南研の誘致に際し、武田は協定を一蹴(いっしゅう)。市も追認した。湘南研の工程系排水を自社処理する気は毛頭ない。生活排水同様に公共下水道に垂れ流しとなる。P3レベルの実験を行う研究施設の排水を環境に影響ない段階まで浄化する機能が公共下水道にあるのか。誰が考えても結論は明白だ。
行政訴訟に及んだことでも分かるように、この問題への藤沢市・武田両者の態度は一貫して硬い。一審・二審を通じて焦点は「下水道法10条ただしがき」の解釈に絞られてきた。同法は公共下水道の供用が始まっている場合、区域内の〈排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく〉〈下水を公共下水道に流入させるために必要な〉設備を設置することを求めている。だが、〈ただし、特別の事情により公共下水道管理者の許可を受けた場合その他政令で定める場合においては、この限りでない。〉との文言もある。これが「ただしがき」である。裁判では前述の協定がこれに当たるかどうかが争われている。
協定については78年当時、藤沢市議会でも質問がなされ、「工程系排水を下水道には入れない」点が確認されている事実がある。
99年5月、藤沢市下水道部は市民を交え「合同協議会」を開催。本誌は議事録を入手した。
市民からの質問に答える形で市は〈工程系排水は受け入れないというのが原則です〉〈生活排水と工程系排水を一緒に処理をしている工場はありません〉などと明言している。唇寒し、だ。
ある住民の試算によれば、武田が湘南研で支払う下水道料金は年間2億400万円にも上る。そこまでの巨費を投じても、自社処理したくない「事情」は何か。いったん下水道に入れば、仮に河川や海が汚染されても、責めは行政に向く。責任の所在は常に明確でなければならない。 (敬称略)
住民が公道でビラをまく様子を監視する同友会関係者

2011年5月 2日 11:55 | 医薬品メーカー・武田薬品工業・経済


