観光庁「医療政策」の勘違い
観光庁が鳴り物入りで主導した「医療政策」が早くも壁にぶち当たっている。同庁はこの夏から、日本の医療技術を海外にPRして治療目的の外国人旅行客を誘致する「メディカルツーリズム」の普及に向け動き出した。診療科でいえば心臓外科、機器における磁気共鳴画像装置(MRI)など、日本が欧米諸国と肩を並べ得る優れた先端技術を広く海外にPRすることが目的だ。ターゲットは北米のほか、経済発展に伴い増えてきた中国の富裕層、オイルマネーに沸く中近東の人々。「医療」と「観光」振興の一石二鳥を狙う。
外国人向けのメディカルツーリズムの市場はここ数年、アジア圏で急成長中。タイでは治療目的の旅行者を国外から年間120万人受け入れており、医療観光の収入は観光収入全体の1割に当たる1670億円にものぼる。韓国でも美容整形を医療観光の目玉として2012年までに欧米や日本などから10万人の誘致を目指している。
「観光立国・日本」を目指し、昨年10月に国土交通省の外局として誕生した観光庁だが、「外国人観光客を10年までに年間1000万人に増やす」「国内観光旅行消費額を同年までに年間30兆円にする」という当初の目標は「今や風前の灯火」(大手旅行代理店幹部)。5月に発表した08年度の観光白書では、訪日外国人旅行客数は835万1000人。1000万人にはほど遠いのが実情だ。計画達成のために「『とにかく何でもいいからアイデアを出せ』との役所の号令のもと」(同)、お隣の韓国やタイにあやかろうと打ち上げられたのが、このメディカルツーリズムだ。
だが、必死の旗振りにもかかわらず、どうにも雲行きが怪しくなってきた。観光庁が最大の顧客増の切り札と見込んでいるのは中国人富裕層。3月に年収25万元(約340万円)以上の高所得者層で十分な預金があるなどの条件をクリアした中国人にビザの発給を認めることにした。しかし、中国人にとって「年収25万元」はかなりハードルが高い。その上、「個人観光ビザを取る手続きも煩雑で敬遠される」(同)という。当局は中国人の不法滞在や失踪を防ぐために所得証明や不動産証明などの提出を義務付けているが、これらの施策も中国人の不興を買っている。
いずれもメディカルツーリズム以前の問題である。だが、実際に日本で医療行為を受けようとすると、さらに壁が立ちふさがる。まずは言葉の問題だ。個人客の通訳ガイドを務めるには観光庁が認可する国家資格がだが、普及はまだまだ。また、カードの決済など「医療行為以外にかかる病院での負担が重い」(大手病院幹部)。日本の医療機関では保険適用が受けられないケースが多いのも難点だ。
経済産業省はサービス産業育成の観点から9月に複数の医療機関による共同事業体「国際医療サービス推進コンソーシアム」と旅行業者などからなる「国際医療サービス支援センター」を設立。国内患者の診療に影響を与えない範囲で中国やロシアなどからの外国人客受け入れが可能かどうかの検証作業を始めた。
今年度63億円しか予算を持たない観光庁。並みいる「敵」と渡り合い、施策をやり通せるのか。無策のつけが医療現場に回ってくるのでは、たまったものではない。
外国人向けのメディカルツーリズムの市場はここ数年、アジア圏で急成長中。タイでは治療目的の旅行者を国外から年間120万人受け入れており、医療観光の収入は観光収入全体の1割に当たる1670億円にものぼる。韓国でも美容整形を医療観光の目玉として2012年までに欧米や日本などから10万人の誘致を目指している。
「観光立国・日本」を目指し、昨年10月に国土交通省の外局として誕生した観光庁だが、「外国人観光客を10年までに年間1000万人に増やす」「国内観光旅行消費額を同年までに年間30兆円にする」という当初の目標は「今や風前の灯火」(大手旅行代理店幹部)。5月に発表した08年度の観光白書では、訪日外国人旅行客数は835万1000人。1000万人にはほど遠いのが実情だ。計画達成のために「『とにかく何でもいいからアイデアを出せ』との役所の号令のもと」(同)、お隣の韓国やタイにあやかろうと打ち上げられたのが、このメディカルツーリズムだ。
だが、必死の旗振りにもかかわらず、どうにも雲行きが怪しくなってきた。観光庁が最大の顧客増の切り札と見込んでいるのは中国人富裕層。3月に年収25万元(約340万円)以上の高所得者層で十分な預金があるなどの条件をクリアした中国人にビザの発給を認めることにした。しかし、中国人にとって「年収25万元」はかなりハードルが高い。その上、「個人観光ビザを取る手続きも煩雑で敬遠される」(同)という。当局は中国人の不法滞在や失踪を防ぐために所得証明や不動産証明などの提出を義務付けているが、これらの施策も中国人の不興を買っている。
いずれもメディカルツーリズム以前の問題である。だが、実際に日本で医療行為を受けようとすると、さらに壁が立ちふさがる。まずは言葉の問題だ。個人客の通訳ガイドを務めるには観光庁が認可する国家資格がだが、普及はまだまだ。また、カードの決済など「医療行為以外にかかる病院での負担が重い」(大手病院幹部)。日本の医療機関では保険適用が受けられないケースが多いのも難点だ。
経済産業省はサービス産業育成の観点から9月に複数の医療機関による共同事業体「国際医療サービス推進コンソーシアム」と旅行業者などからなる「国際医療サービス支援センター」を設立。国内患者の診療に影響を与えない範囲で中国やロシアなどからの外国人客受け入れが可能かどうかの検証作業を始めた。
今年度63億円しか予算を持たない観光庁。並みいる「敵」と渡り合い、施策をやり通せるのか。無策のつけが医療現場に回ってくるのでは、たまったものではない。
2009年10月20日 20:14 | 政治・行政


